はじめに
「特許調査」という言葉は聞いたことがあっても、「具体的に何をすることなのか」「自分の場合は必要なのか」がよく分からないという方は多いのではないでしょうか。
このシリーズでは、特許調査の基礎知識から実際の検索方法、専門家に依頼すべきタイミングまで、全12回にわたって一から解説していきます。第1回となる今回は、まず「特許調査とは何か」「どんな場面で必要になるのか」という一番の入口部分を整理します。
特許調査とは
特許調査とは、特許庁が公開している特許情報(出願・登録データ)を検索し、目的に応じて必要な情報を収集・分析することを指します。日本国内の特許情報は「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」という無料のデータベースで誰でも検索することができ、専門家でなくてもある程度の調査は可能です。
ただし、「何のために調べるのか」という目的によって、調べるべき対象や着眼点はまったく異なります。まずはこの目的別の分類を理解することが、特許調査の第一歩です。
特許調査が必要な4つの場面
1. 出願前調査(先行技術調査)
自社で新しい発明をした際、特許出願をする前に「同じ、または似たような発明が既に存在していないか」を確認するための調査です。
先行技術調査を怠ったまま出願してしまうと、審査の段階で「新規性がない」「進歩性がない」として拒絶されてしまうことがあります。出願には特許庁への手数料や書類作成の手間がかかるため、出願前に調査をしておくことで、無駄な出願を避け、権利化の可能性を事前に見極めることができます。
2. 侵害予防調査(クリアランス調査)
自社が新しい製品を販売したり、新しい技術を事業に導入したりする際に、「他社の特許権を侵害していないか」を確認するための調査です。
意図せず他社の特許を侵害してしまうと、製造販売の差止めや損害賠償請求を受けるリスクがあります。特に新規事業の立ち上げや新製品の市場投入前には、この調査を行っておくことが望ましいとされています。
3.無効資料調査(対抗調査)
他社から特許権の侵害を指摘された場合や、相手の特許権に 対抗する必要がある場合に、その特許を無効にできる資料 (学術論文・特許文献など)を発見・分析するための調査です。
有効な無効資料が見つかれば、相手の特許権そのものを無効に できる可能性があり、侵害の主張に対する有力な反論材料と なります。訴訟や警告書対応など、緊急性の高い場面で必要と なる調査です。
4. 技術動向調査
特定の技術分野において、どのような企業がどのような特許を出願しているかを俯瞰的に把握するための調査です。競合他社の研究開発の方向性を分析したり、自社が参入しようとしている分野に既にどれだけの特許が存在するかを把握したりする際に活用されます。
新規事業の企画段階や、研究開発の方針を検討する場面で役立つ調査です。
まずは自分がどのケースに当てはまるか考えてみましょう
* これから発明を出願しようとしている → 出願前調査
* 新しい製品・サービスを世に出そうとしている → 侵害予防調査
*他社から権利侵害を指摘されている/相手の特許に対抗したい → 無効資料調査(対抗調査)
* 新規事業や研究テーマを検討している → 技術動向調査
同じ「特許調査」という言葉でも、目的によって調べ方や見るべきポイントが大きく変わります。次回以降、無料で使えるJ-PlatPatの具体的な使い方から順番に解説していきますので、まずは「自分の場合はどの調査が必要か」を意識しながら読み進めていただければと思います。
